【今回のテーマ:あえて転職しないでいい状況に賛同するとしたら】
一度以前紹介したことがあると思うが、村山昇さんという人財教育コンサルタントの方のブログを読ませていただいている。一部読めていなかった時期があったので少しまた読みあさりさせてもらっているが、その中に『転職を考えるとき』という4回のシリーズ記事があった。
「転職」を考えるとき〈1〉~栄転と流転の分岐点は
「転職」を考えるとき〈2〉~現職を「卒業する・去る・逃げる」
「転職」を考えるとき〈3〉~転職のリスク
「転職」を考えるとき〈4〉~転職は会社への裏切りか
(各記事へのリンクは最後の関連記事に掲載)
テーマを見るだけで、日本での転職に対する見方を垣間みることが出来る気がする。『転職は劇薬である』『認識すべき6つのリスク』という表現などから、改めて、日本人はとても変化を恐れる国民なんだなあ、と感じてしまう。(特にこの村山さんのブログでは言葉をとても丁寧に選んであるという印象が強いので、だからこそ、そのインパクトを感じてしまう。)
先日少し仕事探しについてコメントしたように、欧米に住んでいると、特にホワイトカラー層では『転職』は日常茶飯事であり、上記とは全く感覚が違う。基本、栄転でも流転でも転がる方がいい、と考える人の方が多い。そもそも会社への裏切りを感じる前に、恩義すら大して感じていないドライな関係であることも多いので、あくまでも契約やコミットしたことにパフォーマンスが見合ったか否か、という客観評価もドライに行われる。
…と書くと、私が転職賛成派として意見をツラツラと述べるに違いないと構えた方もいると思うが、とはいっても、当然大規模リストラは様々なドラマを引き起こす。泣いたり、怒鳴ったり、、、そういうことも起きるわけだ。逆にこんなリスクや劇薬をある程度回避できる状況がどれほどありがたいかについて考えてみようではないか、というのが本日の内容。
①安心して居座れる場所がある。
『本当はこの会社のサービスに興味がない』『もうやりたいことがない』『先が見えない』などと、同い年ぐらいの日本の友人の口からため息と同時に漏れる言葉だが、正直、相当の失敗をしない限り会社から見捨てられることはないというのも事実だ。アメリカで働いていた時、社員の3割がリストラになる状況を間近に見た身としては、まずは安心して居座れる場所があることをありがたがった方がいいのではないか、と思う。
②最初やったことが合わなくても社内異動で軌道修正ができる。
『総合職』という非常に曖昧なスタンスでリクルートされ、個人の意思は鑑みられつつも多くの場合は会社の人事主導で次の配属先を決めると聞く。強い意思を持たずとも、自動的にいろんなことをさせてもらえるということだ。最初の配属が合わない場合も次に部署異動を希望すればいいし、数年かけながら低いリスクで異動し続けることも可能。複数の部署から自社を見ることができるというシステムにはメリットも大きい。
③人的ネットワークが全く無駄にならない。
基本的にあまり人が動かない環境であれば、時間をかけて(時には無駄にしながら)構築した社内ネットワークが無駄にならない。しかも社外でも基本流動性がある程度限定的である環境であれば、同じことが言える。日本でLinkedIn利用者数が少ないのはそれが理由だろうか。私の場合、周囲で人が動きすぎるのでこのようなツールがないと正直誰がどこにいったかもはやトラッキングできない。せっかくあの会社とコネが出来たといっても、『え、もういないの?』となる始末。先方がお金を取る方(サービス提供者)の場合は引き継ぎがなされているが、逆の場合は引き継ぎも適当であり、最終日に『それではお元気で』とメールが来るだけだ。
欧米などファンクショナル・エクスパートとして自分のスキルを会社に提供する、という発想が中心の雇用市場においては、逆に大胆に動くことが後々不利にもなりかねない。最初何をしたかにその後大きく左右される。だからMBAを機にキャリアチェンジを目指す、というのも主導だが、最近ではキャリアチェンジの難しさについてもよく耳にする。
先ほど少しコメントしたが、私も米国時代に勤めていた会社が大幅にリストラを行った。そもそもグループレベルでは解雇は比較的日常茶飯事だったため、グループ内他社から来た私は『当然そうなっちゃいますよね』と正直そこまで驚かなかった。しかしこのグループ企業のみがこれまで一度も大規模リストラを行っていなかったため、社員3割が解雇の発表があった際はとても大変な騒ぎだった。(ちなみにそれは米国事業で、欧州事業も15%の社員削減。)
その際、セールスとマーケティングの社員が全員呼び出され、数人のマーケティングリーダーと私の上司の上司が現状について報告をした。他のリーダー2名は『いつか状況は好転する。Be courageous. bla bla bla』とその時の心境として最も聞きたくないことを話したが、ちょっとダニエル・クレイグっぽい私の上司の上司は次のように言った。
『Listen, we all know this sucks. But go out there. Find a new position. That is the only way to survive this crisis. Go for something even if it is below your current position. The reality is that, when you are going through this type of crisis, you have to be ready to take a position for which you are overqualified. That's life. It may take you a few years to recover and get back even to where you stand know. But don't be afraid. Go acquire new skills. Challenge yourselves in a new environment. Learn about new industries. For those who live the coming two or three years as best as you can, I can assure you that you can come back as a more complete professional.』
言うなら本当のことを言ってほしい、というのがその場にいた社員が思っていたことに違いない。会場の空気が少し変わった気がした。セットバックをどう生きるか。私にとってもこの正直なコメントはよくぞ本当のことを言ってくれた、ととても印象的だったので一生覚えておこうと思った。
でもセットバックばかりでは正直疲れる。安定だって悪くない。あとはそこで何を自分の命題としてやっていくか。劇薬を飲む前に、まずは今いる環境で何か出来ることはないかを考えてみてはどうか。自分で作れる変化はないか。
今日はもう水曜日。週末が見えてきた。今日も一日、がんばろう。
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【関連記事】
村山昇さんのブログより
『人財教育コンサルタントの職・仕事を思索するブログ
知平線の向こう ~明日の“働く景色”がみえてくる』
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発行元:Analyze + Summarize
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