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2012年11月9日金曜日

【記事リビュー】(2012/11/9):Sayonara to the corporate life


 A+S Project『気になるあの記事この記事』は、スタッフが面白いと思った記事や情報をまとめ、軽~いトーンでコメントや感想、考察を書いているもの。

そういうご理解で読んでいただき、関心を持たれた方は関連記事や原文にもアタックしていただければと思います。 

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【気になるあの記事この記事】
大企業にサヨナラ、日本のアントレプレナー

記事の紹介
タイトル:Sayonara to the corporate life
出典:Financial Times (November 7, 2012)
原文:英語


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめ編集してある点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)

2007年、日系では最大手のコンシューマ機器メーカー、パナソニックを退社した岩佐琢磨氏は、東京でコンシューマ機器メーカーCerevo社を立ち上げた。大手メーカーでも厳しい状況の中、である。『特に不安は感じていませんでした』と34歳の彼は語る。会社名はConsumer Electronics Revolutionを省略したもの。自分自身のことを『楽しく挑戦を感じられることをやらないと駄目なタイプ』という彼は、長めの髪とオシャレな眼鏡という格好で、自社オフィスの角際でもつれたケーブルや機器の詰まった段ボール箱に囲まれている。いかにもアントレプレナーといった印象だ。

岩佐氏のように、毎月の給料を手放し、大手企業への所属を評価する社会的傾向を押し切って独立するアントレプレナーは日本では未だ少数派だが、本当にやりたいことに取り組むことによる刺激や満足を求める人の数は増加してきている。個性や自信を全面的に押し出す姿勢も、チームワークや和を尊重する日本社会では未だに珍しい。

濃い色のスーツと滑らかなネクタイという装いの遠藤直紀氏はファッション業界関係者と見間違うばかりだ。現在38歳というが、2000年にアンダーセンコンサルティングを退職した際は何をすれば良いか分からなかったそうだ。しかし『情熱を持てることをしたかった』と彼は言う。結果、顧客行動分析に基づいたウェブサイトデザインを行うbeBit社を2003年に創業。

現在29歳の八木啓太氏は、富士フィルムを退職後、東京と富士山の中間地点の小田原市でBSize社を設立。デザイン性が高いだけではなく機能性にも優れるコンシューマ機器の製造販売を行う。高校時代、アップル社のスティーブ・ジョブスに強く影響された、と物腰の柔らかい彼は語る。

日本の新世代アントレプレナーたちは、大手企業での雇用の保障よりも『やりがい』を重視する傾向が強い。大手企業で勤務をすることの方が起業よりもリスクが高いと言う者さえいる。日本の大企業はジェネラリストの育成を中心としており、社外でも即戦力となるスキルを身につけることが難しいからだ。『短期的には大企業の方が雇用の保障はある。しかし、もし倒産でもした際には頼ることができるものがなくなってしまう。長期的に考えると、どこででも戦力として使えるスキルを身につけていくことの方が雇用の安全につながる』、と遠藤氏は言う。

岩佐氏はパナソニックへ入社した頃は独立して起業することなど考えていなかったという。しかしYouTubeが流行りはじめたころ、インターネット接続可能なテレビの開発を社内で提案。しかし上司に時期尚早と却下されたという苦い経験を持つ。この一件により気づきがあった。パナソニックは既存のテクノロジーをベースとした開発には長けているものの、自分がやりたいと考えているような新しいプロダクトカテゴリーの開発は不得意なのだ。

彼は今、Cerevo社で10名の社員と供にインターネット対応デバイス『Live Shell』などを開発・製造・販売している。Live Shellを用いれば、デジカメで取った(コンピュータを介することなしに)動画を直接インターネット上でストリーミング配信ができるという。すでにベンチャーキャピタルから2ラウンドで計3億7000万円の出資を受けている。Inova、Kronos Fund、Inspire、Neostella Capitalなどの日系ファンドが主要投資家だ。

大企業によるコスト削減やリストラが日本の若者の起業の追い風となっているという。八木氏の会社には、現在パナソニック勤務している高校時代の友人が加わることになっている。『コスト削減ばかりを命じられて、仕事がつまらなくなってしまった』らしい。

すでに生活水準は高いこともあり、日本人の間は、物欲よりも健全な社会構築への貢献意欲が高まっている、と、ベンチャービジネス育成に携わる日本ベンチャー学会の田村万里子氏はいう。昨年の津波災害の後、家族や地域のつながりの重要性が再認識され、特にこの傾向は強まっている、という。『若者の間で社会貢献を希望する人が急増している』と田村氏は言う。

『人は世界をより良いものにするために働くべきだ』と遠藤氏も言う。『何よりもまず利益の追求、という思考は世界を滅ぼすと考えている。』ヘンリー・フォードや松下幸之助など、世界を代表するアントレプレナーたちはこのような考えのもとに起業したという。『単に楽しみのために起業した人はすぐ辞めてしまうが、よりよい社会を作ることを目指す人は簡単にはあきらめない』と彼は語る。

八木氏は社会貢献へのコミットメントからベンチャーキャピタルからの出資を断ったという。『利益追求型のビジネスモデルを投資家から求められても、それは自分の意志に反する』というのが理由。しかしベンチャーキャピタルの出資なしにbeBit社は78人のフルタイムスタッフと20名のパートタイムスタッフを抱える規模にまで成長した。住友三井銀行、ホンダ、ネスレなどの大手企業を主要顧客に持つ同社は、10億円を超える資本金を持ち、台湾に海外初の支社をオープンした。

これまでの日本では、アントレプレナーを取り巻く環境は厳しいものだった。金融セクターはリスクを嫌う上、日本は文化的にも失敗に寛容ではない。しかし政府はスタートアップ企業へのサポートを強化し、低金利の融資や融資保証を提供するようになった。八木氏はBsize社設立にあたり、政府系金融機関から2000万円の融資を受けている。

しかし最大の環境の変化としてはインターネットおよびオンラインサービスの普及が挙げられる。これらツールを活用することで、資金の少ない中小企業にとっても事業展開のバリアが大幅に軽減された。岩佐氏はSkypeなどのオンライン通話サービスやFacebookを利用したマーケティングなど、オンラインでの無料サービス増加が特に起業を後押ししているという。『Facebookを活用したマーケティングは、世界中で簡単にプロダクト紹介が可能であり、非常に効果的』という。オンラインで商品販売を行う八木氏もこれ同意する。『これまでブランドを確立するのは非常に難しかったが、ソーシャルメディアの力で大手と競合することが可能となった』。


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【ここからがA+Sのコメント!】 

一昨日、有名ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんのしばらく前の対談記事、『大企業の正社員、3割は会社を辞める』(下記『関連リンク』にURL挿入)をたまたま読んだ後だったので、今回は英大手新聞ファイナンシャルタイムズで日本の大企業離れに関する記事を紹介することにした。ファイナンシャルタイムズは日本の企業文化に関しては特に批判的な記事が多いという印象があるが、今回は日本のアントレプレナーにスポットを当てた内容だ。

企業勤務経験なしに自分で事業を起こす人もいると思うし、今回取り上げられていた3名のように、大手企業での勤務経験を土台に起業するというパターンもある。ちきりんさんと城さんの対談でも、『今後、給料カーブの頂点が40歳ごろで600万円レベルという時代になれば、大企業勤務の社員の3割は会社を辞めるのではないか。特に優秀な人ほど、やってられない、と外へ飛び出すだろう』というコメントがあった。

本当にそうなって行くとしたら(個人的にもそうなると思う)、労働市場の流動性が重要になると思うが、でも、よくよく考えると、日本の外資系企業での労働市場ではすでにそれが達成されていると思う。2、3年で会社をどんどん変わって行く人は多い。なぜ外資系市場ではそれが達成されているのか?と考えた時に、実はホワイトカラー層の仕事が中心だからなのではないか、と思った。海外の企業にとって日本は製造拠点ではない場合が多いため、メーカーでもセールス、商品企画、輸出入管理、経理、IT、人事などの職務が中心。特に中途採用が中心の外資企業(かなり日系化している企業もある)では、そもそも新卒で入って来た社員はほとんどいないので、職歴と経験を売りに人が流れ込んでくる。

ただ、一歩下がって考えてみると、日本企業も製造拠点はとっくの昔に海外に移転しているため、随分同じような構造になりつつあると思う。ただ、発想においては全体的に以前の『製造業ありき』の在り方を引きずっているように思える。もちろん製造業が悪いと言っているのではない。日本の技術力の高さは国の強みだ。外から見ていると日本は少ししぼんでいる気がするが、まだまだ世界でも生活水準はトップレベルであることを国民が忘れているように思える。だからこそ、競争力を維持し高めていくためにも変化が必要なのではないか、と思う。

少し客観的に考えれば、今後の日本へのヒントはいろいろなところに隠れていると思う。変化の時期は個人レベルでも国レベルでも多少の思考錯誤は必須だ。大変な時期ではあるが、そろそろ『失われた○年』というのは辞めて、『取り返しに行く元年』と皆が言い始めればいいのにな、思う。


注:『海外ではああだ、こうだ』と私も時々言っている際に気をつけなければならないと思うことがある。それは、一般的に欧米においてもスキルを持ってファンクショナル・スペシャリストとしてどんどん転職している人たちはホワイトカラー層であるという点。それ以外の層の職業観はそれとはかなり異なり、例えば親子とも同じ工場で働くなどということもある。会社や土地への縛りがより強い傾向があることは事実だ。


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【関連リンク】 

日本ベンチャー学会:http://www.venture-ac.ne.jp/

ちきりんx城繁幸の会社をちゃかす(1):大企業の正社員、3割は会社を辞める
(ビジネス誠 2011年5月6日付掲載分)


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2012年11月3日土曜日

【記事リビュー】(2012/11/2):Actually the World isn't Flat


A+S Project『気になるあの記事この記事』は、スタッフが面白いと思った記事や情報をまとめ、軽~いトーンでコメントや感想、考察を書いているもの。

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【気になるあのビデオ、このビデオ】
世界はまだまだグローバルじゃない

ビデオの紹介
タイトル:Pankaj Ghemawat: Actually, the world isn't flat
出典:TED (Filmed in June, 2012)
原文:英語


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめ編集してある点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)


『国境を超えたインテグレーションはほぼ完了したと言えるレベルに到達しており、私たちはひとつの世界に住んでいる。』このような考えは、プロ・グローバライザー(訳注:例えばコラムニストのトム・フリードマンなど、グローバル化推進を唱える人や団体)、そしてアンチ・グローバライザー(訳注:グローバル化に反対する人や団体)両方が受け入れている見解だ。

しかし、実際どれぐらいグローバルな世界に我々は生きているのだろうか?関連データを集めて実証することが現状理解に近道だと私は考えた。しかし、国際電話の利用は音声通話全体の2パーセント、世界の人口における移民第一世代は3%、海外からの直接投資も投資全体の10%にも満たず、GDPを占める輸出の割合も20%程度なのだ。

現状は世界はすでにひとつとなっていると言うにはほど遠い状況であるにも関わらず、一方で、世界各地でアンケート調査を実施しても、3倍も4倍も誇張されて『グローバル化』が認識されている。

なぜそのようなことになるのだろうか?

1点目にデータの欠如が挙げられる。数年前、私が初めてこれらのデータを論文("Why the World Isn't Flat")で発表した際、(グローバル化を提唱する)トム・フリードマンは私のデータ収集の狭さを指摘した。しかし、驚くことに、彼の700ページにも渡る著書("The World is Flat")にはひとつもデータが提示されていない。データがないままグローバル化という言葉だけが先走りしているのだ。

2点目に、ピアプレッシャーが挙げられる。"Why the World Isn't Flat"という論文を発表したきっかけは、インド・ムンバイでのテレビインタビュー。その際、インタビュアーに『教授はなぜ今でも世界は(フラットではなく)丸いと考えているのですか?』と、まず最初に聞かれた。あたかも『なんてかわいそうな教授だ、ずっと部屋に閉じこもっていたから現実を知らないのだ』、という同情を向けられたかのようだった。そこで、『これではまずい、この考えについてきちんと説明をする必要があるな』、と考え、この論文をまとめたというわけだ。世界はフラットではない、と言えば疑いの眼を向けられる一方で、『世界はひとつ』、と言うと周囲から同意を受け入れられる、これも現実だ。

3点目に、テクノロジーの進歩が誇張されすぎている点。例えば、Facebookを利用すれば、確かに世界の裏側の人とも簡単に友達になれる。が、実際に他国の友達が占める割合は10~15%程度だ。自国のみで生きているとは言えないが、まだまだグローバルとは言いがたい。テクノロジーは既存の人間関係に重なる形で利用されているのみなのだ。

グローバル化はまだまだこれからであるというのに、すでに世界はひとつだ、と主張するようでは、今後の更なるグローバル化の試みを停滞させてしまうことになりかねない。実際はどの程度グローバル化が進んでいないか、現状を正確に理解することで、世界レベルの公利への貢献に今後どのような取り組みが可能かを把握することができるはずだ。

また、過度の誇張を是正することは、グローバル化に対する危惧を軽減することにもつながる。例えば、フランスでは移民規制の是非について議論があるが、フランスでの移民の割合はおよそ24%ということになっている。それは本当だろうか。実際は8%程度だと理解すれば、過激なレトリックも通用せず、議論の方向性も代わるのではないか。米国では、Chicago Council on Foreign Relationは国際援助に関する国民の認識についてアンケート調査を実施したが、結果は連邦予算の30%程度が国際援助に割かれていると国民は認識しているという。だが、実際は1%程度だという。認識と現実には大きな隔たりがあるのだ。

OECD加盟国による国内貧困層へのサポートと、海外の貧困層へのサポートの比率は3万対1の割合という。もちろん、われわれが本当にグローバルでコスモポリタンであるとしたら、この比率は1対1であるべきだ。ただ、もしこの現状が改善され、この比率が1万5000対1のレベルになっただけでも20年前のリオサミットレベルに到達したレベルであるのみだ。どれだけ我々はまだ外に閉じているかを理解すれば、更なるオープン化による改善がどれほど期待できるか見えてくるだろう。

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【ここからがA+Sのコメント!】 

ネタ探しに久々にTEDのビデオを見ていた。ポータルでは毎日のように新しいビデオがアップロードされているのでいつ訪れても学びがある。最近では翻訳プロジェクトも行われており、時々日本語のスクリプトがあるビデオもある。隙間時間活用向けとしては最高のポータルだ。

今回紹介したビデオで、スペインのトップビジネススクール、IESE Business School(イエセ)の教授、Pankaj Ghemawat氏は、グローバリゼーションの程度は誇張されすぎているという見解を共有。もう少し現状を正しく受け止め、まだまだグローバル化の加速の可能性があることを認識することが重要なのではないか、という。同氏の著書、『World 3.0』も面白そうだ。

確かにGhemawat氏が言うようにグローバリゼーションは誇張されていると個人的には強く同感する。現時点では国や会社レベルで自国と『外国』がどう付き合っていくか、という切り口が中心で、人やモノが世界を駆け巡る時代、というにはまだまだだ。ただ、同時に、このハイパー・グローバルな数パーセントがグローバライザー(グローバル化推進)として持ちうる影響力は計り知れない。数パーセントの動きが、周囲に対し実際よりも3~4倍のグローバル化レベルを感じさせるとするならば、なんてパワフルなんだ、と思うわけだ。そういう意味で、現状は正しく理解しながらも、グローバライザーの動きも注目に値すると個人的には考えている。


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2012年10月16日火曜日

【記事レビュー】ミャンマー:Long Reliant on China, Myanmar now turn to Japan


Long Reliant on China, Myanmar Now Turns to Japan

記事の紹介
タイトル:Long Reliant on China, Myanmar Now Turns to Japan
出典:New York Times (October 10, 2012)
原文:英語
リンク:


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)


ヤンゴン市内中心部にて、後にピューリッツァー賞を受賞することとなった写真に長井健司氏の最後は納められた。ミャンマーの軍事政権の残酷さを物語る写真だ。長井氏は日本人のジャーナリストで、5年前(ミャンマーの反政府デモを取材中)反政府運動を沈静化しようとする軍に射殺された。この事件は、ミャンマーと日本の関係をこれまでになく悪化させることとなった。

しかし現在では、日本は政府による協力な後押しと民間企業による投資を拡大、過去の独裁主義イメージを払拭したいミャンマーにおいて一気にプレゼンスを高めている。これまでの中国の独占的立場を脅かすまでに至っている。

長井氏が殺害された場所からほんの少し離れた場所にある市役所の4回では、日本のエンジニアが首都ヤンゴン市内の道路、通信網、上下水道整備の建設プランを作成している。

「ミャンマーは復興に力を貸してほしいと言って来ている」、と在ミャンマー日本大使館の丸山市郎公使は話している。ミャンマーのテイン・セイン大統領は東京に赴き、国の再開発の主要プロジェクトを日本に委託することを選んだ。ヤンゴン市の復興に加え、日系企業のコンソーシアムはティラワ経済特区開発および郊外には衛星都市の開発も受注している。

「正直、日本の関与の規模に加え、日本がここまで敏速に対応したことに驚いている」とミャンマー経済に詳しいオーストラリアのマッコーリー大学シドニー校のSean Turnell教授はコメントしている。ミャンマーは、最大の投資元である中国一辺倒から方針を変更し、日本を重要プロジェクトに起用しはじめ、ミャンマーは中国と日本というアジア二大経済大国によるアジア域内でのプレゼンスと影響力拡大に向けた競争の場となっている、とTurnell教授は言う。

中国と日本のミャンマーにおける投資戦略は異なる。日本はミャンマーの低賃金の労働力確保を狙い、タイおよびベトナム、カンボジアのインドシナエリアに加え、ミャンマーにおける工場の増設を狙っている。一方、中国はミャンマーでの天然ガス、宝石類、材木、ゴムなどの天然資源に加え、ダム建設による水力エネルギー確保に目を付けている。しかし中国が資源を搾取しているという印象が反中国の動きは、Monywa銅鉱山でのストライキや昨年のミッソンダム建設の中止などという形で表れている。

マレーシアのCIMB Asean Research Institute(CARI)の最高責任者、John Pang氏は、ミャンマーの日本へのシフトを次のように見ている。「日本に魅力を感じているというよりも、中国への反感が理由。中国自身もこの競争を手放した。ミャンマー政府は日本は脅威と見られておらず、両国政府トップ間も信頼関係を構築することができた。」

アジア他国もミャンマーとの関係改善とビジネス関係強化に動いている。韓国企業やシンガポール企業も同様にミャンマーで活発に動いている。しかし日本のアプローチが最も包括的だ。「過去20年ほど例をみない規模のプロジェクトだ」とプロジェクトに融資するJICAミャンマー事務所長の田中雅彦氏は語っている。日本政府によるミャンマーへの融資は利子1%以下で最初の10年は返済不要、返済期間も50年と、ほとんど寄付に近い内容だ。

当然ながらテイン・セイン大統領はこのチープマネーは魅力的であったはずだが、それよりも他のことに目を向けている。それは2015年の再選だ。銀行、学校、病院やその他施設を含むティラワ経済特区開発を「大統領は2015年までに終了してほしいと要請している」と丸山氏は言い、冗談を含めてこのタイムラインを「ミッション・インポッシブル」と言う。日本財団の笹川陽平氏はミャンマーの貧しい少数民族居住エリアを中心に援助を行っているが、「国民全員が軍事政権からの民主化への移行による恩恵を期待している」とする。テイン・セイン大統領は同様に日本財団に対しても過疎地における学校建設などを含む同財団受注分のプロジェクトの早期終了を希望しているという。

ヤンゴン市内では、日本の影響力の増加を見て取れる。市内のビルボードにはキャノンカメラの広告が見られ、また日本航空、全日空はミャンマーへの直行便を12年ぶりに再開した。

市内のインフラ整備は1948年までの英国統治時代に行われたものだ。老朽化した鉄道網の上を英国製の電車が走っている。ヤンゴン市内の歩道は隙間があって油断ができない。荒廃した上下水道施設は中心部のみに敷設されており、パイプからは水漏れしている状況だ。町の外れには貯水池があり、魚、枝葉やゴミが挿入しないよう竹でできた濾過システムが施されている。

日本政府はヤンゴンの港の波止場6カ所に加え、公共交通機関、発電所の再開、バゴー川の2本目の橋の建築を計画している。
フィージビリティ・スタディが年末頃までに終了した際、おおよその建設費用計算ができるとしているが、10億ドル規模のプロジェクトになる模様だ。その他、日本政府はすでにミャンマーへの延滞債務帳消しあるいは返却期間見直しを発表している。

ミャンマーが地理的に戦略的重要性を持つことは確かだが、日本とミャンマーの歴史的関係も背景も注目を浴びる理由のひとつに挙げられる。第二次世界大戦中の日本軍によるビルマ占領は残酷なものだった。しかし英国からの独立の際のリーダーであったアウンサン(アウンサンスーチーの父親)は日本で訓練を受けたという経緯もある。ミャンマーと日本は、現在の米国とベトナムのように、敵対から友好関係へと関係改善に至った。

日本財団の笹川氏にとっては、ミャンマー復興に携わることには個人的な意味も感じている。戦後、ビルマからの輸入米を食べていたことを覚えている氏は、遅ればせながらミャンマーの日本復興に対する協力への恩返しをしたいと考えているという。

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【関連ニュース記事、ビデオなど】

●急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏(ロイター通信、2012年10月5日付)

●ミャンマーで大型インフラ事業拡大 丸紅社長が会見(日経新聞、2012年10月12日付)

●クローズアップ2012:ミャンマーの延滞債務解消 日本企業進出加速へ(毎日新聞、2012年10月12日付)

●進藤隆富の取材後記:経済沸騰!いざミャンマーへ(テレビ東京 2012年10月13日)
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【ここからがA+Sのコメント!】 

最近ミャンマーへの関心が世界中から高まっている。日本人だけではなく欧米人の口からもミャンマーへの関心について話を聞く機会が増えてきた。

そこで私も不勉強を解消すべく、ミャンマー関連の記事を読みはじめたが、日本と海外の記事で気になる点がひとつあった。日本の報道では両国の友好的関係がベースとなり、ミャンマーでのプレゼンスが一気に上がっているという内容が多い。しかし海外の報道を見ると、確かに日本の影響力は高まっている、しかしそれを競争的脅威と感じている国はあまりない、という内容。ひとえに中国による影響の牽制と見るものが中心。

ロイター通信の記事にはグラフがあり、20126月時点でミャンマーへの出資額が最も多い国のランキングは以下の通り。
①中国(約120億ドル)
②タイ(約90億ドル)
③香港(約60億ドル)
④韓国(約30億ドル)
⑤英国(約30億ドル)
⑥シンガポール(約20億ドル)
⑦マレーシア(約10億ドル)
⑧フランス(約5億ドル)
⑨米国(約3億ドル)
⑩インドネシア(約3億ドル)
⑪オランダ(約3億ドル)
⑫日本(約2.2億ドル)
の順となっている。
数字は明記されていなかったのでグラフからおおまかに読み取った。)

今回の日系コンソーシアムの投資および債務帳消しなどの総額は総額180億ドル規模に上ると報道されていたため、確かに日本のプレゼンスは大幅に高まったと言えるが、現時点では欧米諸国は経済制裁をしながらも日本よりも投資額を上回っており、これから急ピッチで投資額増加を行ってくると見られている。

市場参入の狙いも中国と日本は異なる。アフリカ市場同様に、資源確保を軸としている中国に対し、日本は低賃金での雇用を主な軸としている。そのため、中国がミャンマー市場内での競争相手を日本ではなく自国同様に資源確保を目指す他国と見ている可能性も高い。

いずれにしても、これからミャンマーがホットになることは間違いないため、今後も動向を追いかけていきたい。シンガポールからもローコストエアラインが運航していることだし、個人的にも近々是非訪れてみたい国のひとつでもある。



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2012年9月30日日曜日

【記事リビュー】Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding


Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding

記事の紹介
タイトル:Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding
出典:Economist (29 September 2012)
原文:英語


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)

マレーシア航空、カンタス航空などアジア大手航空会社は経営が悪化しているのに対し、アジア発のローコストエアラインであるAirAsiaはたったの10年でアジアの空で大きく羽を広げている。昨年のみでも3000万人の顧客が同社フライトに搭乗し、利用者数も年間10%成長し続けている。利益率も上々だ。中国国内市場には参入していないものの、同社は自社をアジア4位キャリアと位置づけている。

本社は現在もマレーシアだが、今後、ジャカルタオフィスは東南アジアでの事業拡大において、重要な位置を占めることとなるだろう。東南アジアは6億人の人口を抱え、地理的には離島が多い。他地域でのように、交通道路や高速列車などの他の主要交通手段による競合は限定的であり、航空会社にはまさに魅力的な市場と言える。

AirAsiaはローカルエアラインBatavia Air買収(※現在も規制当局による承認待ち)によりインドネシア市場に参入。好調な経済、ミドルクラスの拡大、2億4000万人の人口は1万7000の島々に分散していることなど、インドネシア市場のポテンシャルは明瞭だ。Batavia Air保有分の32機に加え、新たに18機をインドネシア便向けに投入予定。全日空との提携により日本市場にもローカル線で参入したばかりだ。次は韓国参入と思われる。AirAsiaはすでにエアバス社の大手顧客でもあり、同社のA320および375を導入。追加で100機オーダーを出す予定。

AirAsiaは他のインカンバントオペレータよりもチケット価格は安いものの、欧州のローコストキャリアのように破格というほどではない。アジアユーザーは多少お金を払ってでもクオリティの高いサービスを期待するため、フライトアテンダントはしっかりとしたトレーニングを受けている。出発時刻がずれることもまれだ。

東南アジア市場においても、将来的にはTiger AirwaysやJetstar Asia(いずれもシンガポール系)、Cebu Pacific(フィリピン系)、Lion Air(インドネシア)など、他のアジア系ローコストキャリアとの競争が激化すると予想される。規制環境も厳しく、政府主導で大型空港の設立が行われてきたため空港税も高い(通常、AirAsiaチケット価格の約15%に相当する額が空港税として追加されてしまう)。今後、利用価格の低い空港が増加するかどうかが成長の鍵となる。

また、タイ、マレーシア、シンガポールは国内市場の規制緩和を実施しているが、他市場では現在も規制が厳しく、ローカル線の運行本数の制限など、事業拡大への環境が整っているとは言いがたい。またリベラルと言われているシンガポールにおいてもAirAsiaはオペレーションライセンス取得には至っていない。

また、ロンドン、パリとアジアを結ぶ長距離路線は収益性が見合わず運航中止となった。昨今のガソリン価格の上昇が主な原因であるものの、欧州の二酸化炭素に対する課税も重くのしかかる。

しかしアジアにはインドのような事業機会もある。人口全体、またミドルクラスの規模もインドネシアを大きく上回る上、インド政府も航空事業分野を外資にも解放すると発表。外資規制は49%と存在するものの、非常に魅力的な市場であるとAirAsiaのCEO、フェルナンデス氏は語っている。しかし、急いで参入するよりも、現時点ではローカルキャリアが競争により疲弊するのを待ってからの参入を検討しているようだ。


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【ここからがA+Sのコメント!】 

この夏、3週間で東南アジア3カ国6都市を旅行した際、AirAsiaにはずいぶんお世話になった。東南アジアでの移動の場合は1~2時間程度のフライトが中心。チケットも安価で購入できるが、欧州のローコストキャリア利用の際よりもスムーズである印象が強い。 また欧州ほどローコスト向けの空港が多くないため、たいていの場合はインカンバントキャリアと同じ空港に乗り入れていることも「スムーズ」と思える理由かもしれない。加えて文化的な要素も含まれると思うが、欧州のEasyJetなどに比べてフライトアテンダントのサービスが丁寧だ。はっきりいって、欧州のインカンバントキャリアのサービスなんかよりずっといい。

AirAsiaの受け売りとなってしまうが、欧州のローコストキャリアのシェアは約31%、対し東南アジアでは22.7%という。今では西はクアラルンプールからイランのテヘランにも運航している。インドネシア市場参入後は、メッカへの巡礼者を意識し、サウジアラビアまで羽を広げるのだろうか?(いや、サウジ側の規制体制により不可能なのだろうか?)

AirAsiaは女性の雇用にも積極的であるようで、機内誌にも女性のトップを紹介している記事が掲載されていた。マレーシア事業のトップ(+ボードメンバー)、フィリピン支社のトップは女性であるという。その他、マーケティングなどの主要ポジションにも女性が高いポジションを占めているようだ。
AirAsiaのタグラインは「Now Everyone Can Fly.」しかし東南アジア社会に移動手段を提供しているだけではなく、アジア発の成長企業のひとつとして、今後も多方面でのソーシャルインパクトが注目される企業であることは間違いない。とはいっても航空業界の競争は厳しい。アジアにはインカンバントキャリアに加え多数のローコストキャリアが存在する。今後どのような戦略で事業拡大を押し進めるかは要注目。

毎回記事レビューとコメントを書きながら、最もベーシックな市場調査であるマーケットインテリジェンスも疑問の宝庫で本当に面白いと思う。


【関連ウェブサイト】
AirAsia: ルートマップ

AirAsia: What is low cost? 


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2012年9月25日火曜日

【記事リビュー】イノベーション:アップルを模倣することに価値があるのか?(McKinsey Quarterly - The perils of best practices: should you emulate Apple? の抄訳)

The perils of best practices: should you emulate Apple? 
(McKinsey Quarterly September 2012)

【記事の紹介
タイトル:The perils of best practices: should you emulate Apple? 
出典:McKinsey Quarterly September 2012
原文:英語
リンク:

【記事の抄訳
(あくまでも内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は、是非原文にチャレンジしてください!)


成功企業を他社が見習うのは当然だ。すでに試され成功しているアプローチを取る方が、新たなものを一から築き上げるよりも好ましいと考えるのは理にかなっている。80年代、90年代にかけて、米/欧州系企業が看板方式やジャストインタイム生産など日系企業が実施していた生産工程の効率化を取り入れてきたし、マネジメントコンサルタントも成功モデルを積極的に紹介してきた。

しかし他社を大きく引き離し、例外的な成功を遂げた企業というのは、本当に模範となりうるのだろうか?

現在最も注目されているのは紛れもなくアップルだ。「アップル」「イノベーション」で検索すると、過去3年だけでも1500を超える記事が発行されている。スティーブ・ジョブスの伝記も40週連続でニューヨークタイムズのベストセラーリスト入りしている。彼の死後、アップルの「Can-do」カルチャー、斬新なプロダクトデザイン、グローバルサプライチェーンマネジメント、創立者たちに関してなど、多方面から取り上げた書籍が40冊ほど出版されている。リーダーシップ、人材確保・育成、企業戦略、テクノロジーの組み合わせにより、アップルは類を見ない成功企業として成長を遂げてきた。

アップル・モデルはイノベーションを追求する他社の模範と成りうるかをマッキンゼーの「The Granularity of Growth」では分析しているが、成長の3要素として、以下の3点を挙げられる。
①競争優位性のある市場で事業を行い、市場の成長・拡大の流れに乗る形で自社製品やサービスを拡大し売上を増加させる
②M&Aにより成長を取り込む
③事業効率化によるオーガニックグロースを追求する

マッキンゼーの750社を超える企業データベースによると、1999年以降、市場シェア増加(※買収によるシェア拡大を除く)を達成した企業は微々たるものだった。

それとは対照的に、アップルは継続的に確実に市場シェアを拡大してきた。
それだけではない。1999年から2008年の10年間の間、グローバル大手企業(注:スタートアップ、大手への対抗サービスに特化する中小企業は除く、いわゆるインカンバント企業)のうち、本当の意味で新たな市場を形成・確立したのもアップル1社だ。その新たな市場は7.9%の売上成長率の45%を占め、トップ10入りした他社の新事業が売上成長率に占める割合(21%)と比較すると突出していることが分かる。ICT産業におけるトップパフォーマーのLenovoおよびCiscoと比較しても、アップルの新市場形成による成長は6倍も高い。その他の産業では、そもそも新市場形成自体による成長はほぼゼロに近いか、場合によってはマイナス成長となっている。

アップルは他社をしのぐ実績から注目されるべき企業だ。創立者やエグゼクティブのリーダーシップはもとより、斬新な商品、サービス、ビジネスモデル、企業文化に加え、サプライチェーンマネジメント分野などにおいても新たなプロセスやケイパビリティを築いてきてた。デザイン、ブランドロイヤルティ、リテール事業展開においてアップルから学ぶことができる企業は多い。

アップルを模倣すべきではない、と言おうとしているのではない。ただ、何を学ぶのか、そしてどのような結果を求めるのかを明確にすべきだ。

向こう見ずにアップルのディスラプティブ・イノベーションを模倣するのではなく、「スケール・イノベーション(innovation at scale)」戦略を取ることもできる。コア事業において新商品、新サービスを投入し徹底的に効率化しオーガニックグロースを繰り返すことで成長性を保つことはリピータビリティ、持続性の面において優れている。とはいっても簡単に達成できるものではなく、グローバル大手(インカンバント)企業のたった6%が、1999年から2007年の間ほぼ確実にスケール・イノベーションを達成している。しかし技術や組織力、成功しているビジネスモデルなどの既存資産を活かすことが、アップルが行ってきたような新規市場形成よりも多くの大企業にとっては達成可能と言える。

(注:グラフは割愛していますので原文にアクセスしご確認ください。)

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【追加参考記事/書籍】
McKinsey : Granularity of Growth
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発行元:Analyze + Summarize
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Copyright(C):Analyze + Summarize
※無断での転記•引用はお断りしています。

2012年9月5日水曜日

【記事リビュー】海外でのM&Aを成功させるには(McKinsey Quarterly - A yen for global growthの抄訳とコメント)


海外でのM&Aを成功させるには ー 
A yen for global growth: the Japanese experience in cross-border M&A (McKinsey Quarterly August 2012)

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【参考記事の紹介
タイトル:A yen for global growth: the Japanese experience in cross-border M&A
出典:McKinsey Quarterly August 2012
原文:英語
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【記事の抄訳
(注!あくまでも内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。
一語一句知りたい方は、是非原文にチャレンジしてください!)

昨今の円高と国内市場の低迷を背景に、日系企業の海外事業拡大の傾向が強まっている。実際、ここ数年で海外市場での買収案件が急増しており、1990年代のピーク時を超える勢いとなっている。過去の海外事業買収の失敗という痛い経験がなければ、実際はもっと多くの海外買収が行われたと考えられる。

買収後の子会社の組織的な位置づけに関する問題、子会社の特性や違いを理解せずに日本本社のやり方を押し付ける、買収先の社員に対する配慮の欠如、買収直後のインテグレーションにおけるリーダーシップやスキルの欠如など、 グローバルM&Aを担当する日系企業側のトップマネジメントは海外買収におけるハードルを十分理解している。

しかし、 ビジネス文化、マネジメント文化の根本的な差異から起きる問題もある。
日系企業に買収された企業で勤務する外国人にインタビューを行った結果、以下のポイントが挙げられた。

①ハンズオフアプローチ
買収先は自由を求めるだろうという思い込みがあるためか、ハンズオフのアプローチを取ることが多い。そのため、買収された側にとっては期待していた親会社のリソースやケイパビリティのフル活用が難しい。

②曖昧なパワーストラクチャ
誰が社内でのキーパーソンか見極めるのが難しいため、関係構築が難しい。

③中間管理職による本社連携の妨害
実際に子会社との橋渡しを行うのは本社の中間管理職であり、トップへのインプットをスクリーニングする。そのため、子会社からの依頼や希望が本社CEOに対して届いていないなど、情報共有の面で問題がある。

④外国人であることがキャリアの妨げとなること
日本の組織で昇進していくことは難しいと感じられ、給料や待遇には満足していても会社を去って行くものが多い。

⑤詳細事項への執着
日本人の詳細事項へのこだわりに抵抗感を感じる外国人トップも多い。買収の際のデューディリジェンス項目の多さに加え、外国人トップは買収後も細かいデータを執拗に要求されることを嘆く。

⑥買収後のプラニングの欠如
買収契約締結直後、どのようにインテグレーションを行うかについて具体的なアーキテクチャが準備されていない。トランジション時のガバナンスや意思決定プロセス、リソースアロケーションなど、経営にクリティカルな問題が十分話し合われないままになることが多い。

⑦買収締結後、突如よそよそしい態度を見せる
ネゴシエーション中は密に連携しフレンドリーだった日本側のカウンターパートが買収締結後、突然他人行儀になる。日系企業のみに限ったことではないが、日本人は基本的に礼儀正しいため、買収後の変化が特に顕著に感じられる。

上記のような海外買収の落とし穴を回避するには、4のアプローチが考えられる。これらのアプローチをうまくミックスして取り入れることが重要。

①メンタリングやリーダーシッププログラムを実施し、タレント育成を合同で行う(トップマネジメントレベルでのインテグレーション)
スズキのインド事業、武田製薬の米国事業などでは導入されているアプローチ。

②買収先とのコーディネーター部門を設ける(部署レベルの対応)
日立建機はインドのタタ自動車との合弁会社で導入

③買収先においてトレーニングや組織変革を行う部隊を設ける(実働部隊のインテグレーション)

④本社の企業文化が子会社組織全体にも行き届くよう、カルチャーインフュージョンプログラムを実施する(会社レベルでのインテグレーション)

スズキはインドでは異例である、社長が一般食堂で食事する点、社長以下全社員が同じユニフォームを着る、トップと一般社員との差別のない企業文化をインドでも定着させ、また日本で行っている朝の体操もインドで導入した。

今後も成長していくには、日系企業は必然的に海外市場への拡大が必要となる。自社の強みや市場のバリュードライバーを考慮し、買収後の指針や計画を明確に持つことが海外買収の失敗を回避することにつながる。

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【A+Sのコメント】 

このマッキンゼーの記事は、海外買収に際し、日系企業がよくやらかしてしまう失敗と対応策について記載しているが、 個人的にも米系企業での勤務経験から、欧米側のコメントも多少理解ができたような気がする。私が以前勤務していた米系企業はFortune 10入りするマンモス企業。他分野で事業を展開しているコングロメレートだ。最近では少し数が減ってきたものの、以前は鬼のように買収ばかりしていた時期もある。

この会社では、買収後のインテグレーションをリードする、インテグレーションリーダーは花形ポジション。将来的に買収先を含む拡大された事業のトップポジションに着任する可能性が最も高い。インテグレーションをスムーズに行うことは容易いことではないため、トップへの登竜門として活用されているのだ。

このように鼻息荒く買収慣れした企業が、買収後ハンズオフであることはほぼない。マッキンゼーが提案していた4点の、少なくとも3点は導入されていました。

ところで、ハンズオンであるということは、必ずしもマイクロマネジメントし、些細な点でも意思決定に口を出すということではない。ハンズオンというのは、そもそも買収したときの目的を達成するため、最適と思われる方法で着実にインテグレーションの駒を進めていく、という意味だ。もちろん、とやかく言わないとことが進まない場合はマイクロマネジメントすることも方法の一つだが、統合後のビジョンや買収した事業の取り込みのブループリントがあるかどうかが大きな鍵だ。

そう考えると、先ほどの記事で挙げられていた、日系企業がおかしがちな失敗①のハンズオフである理由は、⑥のプラニングの欠如と関連があるように思える。

というより、短いながらも日系企業に勤めた経験から感じる日本側の事情とはこうなのではないか、と思う。

⑥買収後のプラニングの欠如
(海外事業運営経験が欠如、具体的なビジョンがなく買収を実施、そもそも海外事業を取り込める社内体制やリードできる人的リソースがない、など)
②曖昧なパワーストラクチャ
(誰が実際買収後に責任を持ってインテグレーションを実施するかが不明瞭なまま買収後のインテグレーションがキックオフされる)
①ハンズオフアプローチ
(とりあえず買収先に任せて、本社側では中間管理職に委ねる)
③中間管理職による本社連携の妨害
(戦略的思考というよりは、自分と本社トップとの関係性を中心に動くため、無意識的に、あるいは意図的に情報操作をしてしまう)
⑤詳細事項への執着
(しかし、本社トップに質問されたら答えられるよう、詳細事項まで性格に把握しておかなければならないという状況にあり、細かい点のバックアップをしたがる)

ついでに①~⑦の全項目に触れるという意味で上記に挙げなかった2点についても触れるとすると…

 ④外国人であることがキャリアの妨げとなること、これは日本企業の国際化が限定的であるという問題が原因であり、買収先、本社に問わず見られる現象。

⑦買収締結後、突如よそよそしい態度を見せる、という点だが、おそらく当初の礼儀正しさとのギャップも大きいとは思うが、その他、例えば、日本人の傾向として反対意見をパーソナルに受け止めるところがあるため、経営判断として厳しいことを突きつけることが相手にとっても同じようなパーソナルなことに感じると考える傾向があり、人間関係がゆがむのはいたしかたないと思っている節があるように思える。

おそらくこれからは、大企業のみではなく中小企業も海外市場に成長を求めることになるだろう。海外事業展開というのは非常に難しく、熟練のM&Aプレイヤも失敗することがある。

ただ、非常に単純化して生活レベルに落とした言い方をすれば、主婦だってスーパーで1000円の牛肉を買う時に、今晩はこれにしよう、と思うわけである。プランがあっても不成功に終わる買収もあるから、プランがなければなおさらだ。肉なら冷凍しておけばよいが、生ものの企業や事業はストップ することはできない(できるがもちろん売上が削減に至るだけ)。

海外に行かなければ今後の成長はない、という焦りがあるのは当然だ。ただ、プロダクトやサービスなどの分かりやすい部分でのマッチに加え、徹底的なターゲット市場情報収集、その国のビジネスガバナンスモデルの理解や、買収先の企業文化、そのような見逃されがちな部分でのナレッジが合併のスピード感を司るのではないか。

は〜。グローバルの事業展開は奥が深いぜ〜…。

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