2012年10月16日火曜日

【記事レビュー】ミャンマー:Long Reliant on China, Myanmar now turn to Japan


Long Reliant on China, Myanmar Now Turns to Japan

記事の紹介
タイトル:Long Reliant on China, Myanmar Now Turns to Japan
出典:New York Times (October 10, 2012)
原文:英語
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(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)


ヤンゴン市内中心部にて、後にピューリッツァー賞を受賞することとなった写真に長井健司氏の最後は納められた。ミャンマーの軍事政権の残酷さを物語る写真だ。長井氏は日本人のジャーナリストで、5年前(ミャンマーの反政府デモを取材中)反政府運動を沈静化しようとする軍に射殺された。この事件は、ミャンマーと日本の関係をこれまでになく悪化させることとなった。

しかし現在では、日本は政府による協力な後押しと民間企業による投資を拡大、過去の独裁主義イメージを払拭したいミャンマーにおいて一気にプレゼンスを高めている。これまでの中国の独占的立場を脅かすまでに至っている。

長井氏が殺害された場所からほんの少し離れた場所にある市役所の4回では、日本のエンジニアが首都ヤンゴン市内の道路、通信網、上下水道整備の建設プランを作成している。

「ミャンマーは復興に力を貸してほしいと言って来ている」、と在ミャンマー日本大使館の丸山市郎公使は話している。ミャンマーのテイン・セイン大統領は東京に赴き、国の再開発の主要プロジェクトを日本に委託することを選んだ。ヤンゴン市の復興に加え、日系企業のコンソーシアムはティラワ経済特区開発および郊外には衛星都市の開発も受注している。

「正直、日本の関与の規模に加え、日本がここまで敏速に対応したことに驚いている」とミャンマー経済に詳しいオーストラリアのマッコーリー大学シドニー校のSean Turnell教授はコメントしている。ミャンマーは、最大の投資元である中国一辺倒から方針を変更し、日本を重要プロジェクトに起用しはじめ、ミャンマーは中国と日本というアジア二大経済大国によるアジア域内でのプレゼンスと影響力拡大に向けた競争の場となっている、とTurnell教授は言う。

中国と日本のミャンマーにおける投資戦略は異なる。日本はミャンマーの低賃金の労働力確保を狙い、タイおよびベトナム、カンボジアのインドシナエリアに加え、ミャンマーにおける工場の増設を狙っている。一方、中国はミャンマーでの天然ガス、宝石類、材木、ゴムなどの天然資源に加え、ダム建設による水力エネルギー確保に目を付けている。しかし中国が資源を搾取しているという印象が反中国の動きは、Monywa銅鉱山でのストライキや昨年のミッソンダム建設の中止などという形で表れている。

マレーシアのCIMB Asean Research Institute(CARI)の最高責任者、John Pang氏は、ミャンマーの日本へのシフトを次のように見ている。「日本に魅力を感じているというよりも、中国への反感が理由。中国自身もこの競争を手放した。ミャンマー政府は日本は脅威と見られておらず、両国政府トップ間も信頼関係を構築することができた。」

アジア他国もミャンマーとの関係改善とビジネス関係強化に動いている。韓国企業やシンガポール企業も同様にミャンマーで活発に動いている。しかし日本のアプローチが最も包括的だ。「過去20年ほど例をみない規模のプロジェクトだ」とプロジェクトに融資するJICAミャンマー事務所長の田中雅彦氏は語っている。日本政府によるミャンマーへの融資は利子1%以下で最初の10年は返済不要、返済期間も50年と、ほとんど寄付に近い内容だ。

当然ながらテイン・セイン大統領はこのチープマネーは魅力的であったはずだが、それよりも他のことに目を向けている。それは2015年の再選だ。銀行、学校、病院やその他施設を含むティラワ経済特区開発を「大統領は2015年までに終了してほしいと要請している」と丸山氏は言い、冗談を含めてこのタイムラインを「ミッション・インポッシブル」と言う。日本財団の笹川陽平氏はミャンマーの貧しい少数民族居住エリアを中心に援助を行っているが、「国民全員が軍事政権からの民主化への移行による恩恵を期待している」とする。テイン・セイン大統領は同様に日本財団に対しても過疎地における学校建設などを含む同財団受注分のプロジェクトの早期終了を希望しているという。

ヤンゴン市内では、日本の影響力の増加を見て取れる。市内のビルボードにはキャノンカメラの広告が見られ、また日本航空、全日空はミャンマーへの直行便を12年ぶりに再開した。

市内のインフラ整備は1948年までの英国統治時代に行われたものだ。老朽化した鉄道網の上を英国製の電車が走っている。ヤンゴン市内の歩道は隙間があって油断ができない。荒廃した上下水道施設は中心部のみに敷設されており、パイプからは水漏れしている状況だ。町の外れには貯水池があり、魚、枝葉やゴミが挿入しないよう竹でできた濾過システムが施されている。

日本政府はヤンゴンの港の波止場6カ所に加え、公共交通機関、発電所の再開、バゴー川の2本目の橋の建築を計画している。
フィージビリティ・スタディが年末頃までに終了した際、おおよその建設費用計算ができるとしているが、10億ドル規模のプロジェクトになる模様だ。その他、日本政府はすでにミャンマーへの延滞債務帳消しあるいは返却期間見直しを発表している。

ミャンマーが地理的に戦略的重要性を持つことは確かだが、日本とミャンマーの歴史的関係も背景も注目を浴びる理由のひとつに挙げられる。第二次世界大戦中の日本軍によるビルマ占領は残酷なものだった。しかし英国からの独立の際のリーダーであったアウンサン(アウンサンスーチーの父親)は日本で訓練を受けたという経緯もある。ミャンマーと日本は、現在の米国とベトナムのように、敵対から友好関係へと関係改善に至った。

日本財団の笹川氏にとっては、ミャンマー復興に携わることには個人的な意味も感じている。戦後、ビルマからの輸入米を食べていたことを覚えている氏は、遅ればせながらミャンマーの日本復興に対する協力への恩返しをしたいと考えているという。

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【関連ニュース記事、ビデオなど】

●急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏(ロイター通信、2012年10月5日付)

●ミャンマーで大型インフラ事業拡大 丸紅社長が会見(日経新聞、2012年10月12日付)

●クローズアップ2012:ミャンマーの延滞債務解消 日本企業進出加速へ(毎日新聞、2012年10月12日付)

●進藤隆富の取材後記:経済沸騰!いざミャンマーへ(テレビ東京 2012年10月13日)
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【ここからがA+Sのコメント!】 

最近ミャンマーへの関心が世界中から高まっている。日本人だけではなく欧米人の口からもミャンマーへの関心について話を聞く機会が増えてきた。

そこで私も不勉強を解消すべく、ミャンマー関連の記事を読みはじめたが、日本と海外の記事で気になる点がひとつあった。日本の報道では両国の友好的関係がベースとなり、ミャンマーでのプレゼンスが一気に上がっているという内容が多い。しかし海外の報道を見ると、確かに日本の影響力は高まっている、しかしそれを競争的脅威と感じている国はあまりない、という内容。ひとえに中国による影響の牽制と見るものが中心。

ロイター通信の記事にはグラフがあり、20126月時点でミャンマーへの出資額が最も多い国のランキングは以下の通り。
①中国(約120億ドル)
②タイ(約90億ドル)
③香港(約60億ドル)
④韓国(約30億ドル)
⑤英国(約30億ドル)
⑥シンガポール(約20億ドル)
⑦マレーシア(約10億ドル)
⑧フランス(約5億ドル)
⑨米国(約3億ドル)
⑩インドネシア(約3億ドル)
⑪オランダ(約3億ドル)
⑫日本(約2.2億ドル)
の順となっている。
数字は明記されていなかったのでグラフからおおまかに読み取った。)

今回の日系コンソーシアムの投資および債務帳消しなどの総額は総額180億ドル規模に上ると報道されていたため、確かに日本のプレゼンスは大幅に高まったと言えるが、現時点では欧米諸国は経済制裁をしながらも日本よりも投資額を上回っており、これから急ピッチで投資額増加を行ってくると見られている。

市場参入の狙いも中国と日本は異なる。アフリカ市場同様に、資源確保を軸としている中国に対し、日本は低賃金での雇用を主な軸としている。そのため、中国がミャンマー市場内での競争相手を日本ではなく自国同様に資源確保を目指す他国と見ている可能性も高い。

いずれにしても、これからミャンマーがホットになることは間違いないため、今後も動向を追いかけていきたい。シンガポールからもローコストエアラインが運航していることだし、個人的にも近々是非訪れてみたい国のひとつでもある。



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