2012年9月30日日曜日

【記事リビュー】Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding


Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding

記事の紹介
タイトル:Spreading its wings : One of Asia's most successful carriers keeps on expanding
出典:Economist (29 September 2012)
原文:英語


(あくまでもこの記事だけを読んでも理解できるよう、内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は是非原文にチャレンジしてください!)

マレーシア航空、カンタス航空などアジア大手航空会社は経営が悪化しているのに対し、アジア発のローコストエアラインであるAirAsiaはたったの10年でアジアの空で大きく羽を広げている。昨年のみでも3000万人の顧客が同社フライトに搭乗し、利用者数も年間10%成長し続けている。利益率も上々だ。中国国内市場には参入していないものの、同社は自社をアジア4位キャリアと位置づけている。

本社は現在もマレーシアだが、今後、ジャカルタオフィスは東南アジアでの事業拡大において、重要な位置を占めることとなるだろう。東南アジアは6億人の人口を抱え、地理的には離島が多い。他地域でのように、交通道路や高速列車などの他の主要交通手段による競合は限定的であり、航空会社にはまさに魅力的な市場と言える。

AirAsiaはローカルエアラインBatavia Air買収(※現在も規制当局による承認待ち)によりインドネシア市場に参入。好調な経済、ミドルクラスの拡大、2億4000万人の人口は1万7000の島々に分散していることなど、インドネシア市場のポテンシャルは明瞭だ。Batavia Air保有分の32機に加え、新たに18機をインドネシア便向けに投入予定。全日空との提携により日本市場にもローカル線で参入したばかりだ。次は韓国参入と思われる。AirAsiaはすでにエアバス社の大手顧客でもあり、同社のA320および375を導入。追加で100機オーダーを出す予定。

AirAsiaは他のインカンバントオペレータよりもチケット価格は安いものの、欧州のローコストキャリアのように破格というほどではない。アジアユーザーは多少お金を払ってでもクオリティの高いサービスを期待するため、フライトアテンダントはしっかりとしたトレーニングを受けている。出発時刻がずれることもまれだ。

東南アジア市場においても、将来的にはTiger AirwaysやJetstar Asia(いずれもシンガポール系)、Cebu Pacific(フィリピン系)、Lion Air(インドネシア)など、他のアジア系ローコストキャリアとの競争が激化すると予想される。規制環境も厳しく、政府主導で大型空港の設立が行われてきたため空港税も高い(通常、AirAsiaチケット価格の約15%に相当する額が空港税として追加されてしまう)。今後、利用価格の低い空港が増加するかどうかが成長の鍵となる。

また、タイ、マレーシア、シンガポールは国内市場の規制緩和を実施しているが、他市場では現在も規制が厳しく、ローカル線の運行本数の制限など、事業拡大への環境が整っているとは言いがたい。またリベラルと言われているシンガポールにおいてもAirAsiaはオペレーションライセンス取得には至っていない。

また、ロンドン、パリとアジアを結ぶ長距離路線は収益性が見合わず運航中止となった。昨今のガソリン価格の上昇が主な原因であるものの、欧州の二酸化炭素に対する課税も重くのしかかる。

しかしアジアにはインドのような事業機会もある。人口全体、またミドルクラスの規模もインドネシアを大きく上回る上、インド政府も航空事業分野を外資にも解放すると発表。外資規制は49%と存在するものの、非常に魅力的な市場であるとAirAsiaのCEO、フェルナンデス氏は語っている。しかし、急いで参入するよりも、現時点ではローカルキャリアが競争により疲弊するのを待ってからの参入を検討しているようだ。


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【ここからがA+Sのコメント!】 

この夏、3週間で東南アジア3カ国6都市を旅行した際、AirAsiaにはずいぶんお世話になった。東南アジアでの移動の場合は1~2時間程度のフライトが中心。チケットも安価で購入できるが、欧州のローコストキャリア利用の際よりもスムーズである印象が強い。 また欧州ほどローコスト向けの空港が多くないため、たいていの場合はインカンバントキャリアと同じ空港に乗り入れていることも「スムーズ」と思える理由かもしれない。加えて文化的な要素も含まれると思うが、欧州のEasyJetなどに比べてフライトアテンダントのサービスが丁寧だ。はっきりいって、欧州のインカンバントキャリアのサービスなんかよりずっといい。

AirAsiaの受け売りとなってしまうが、欧州のローコストキャリアのシェアは約31%、対し東南アジアでは22.7%という。今では西はクアラルンプールからイランのテヘランにも運航している。インドネシア市場参入後は、メッカへの巡礼者を意識し、サウジアラビアまで羽を広げるのだろうか?(いや、サウジ側の規制体制により不可能なのだろうか?)

AirAsiaは女性の雇用にも積極的であるようで、機内誌にも女性のトップを紹介している記事が掲載されていた。マレーシア事業のトップ(+ボードメンバー)、フィリピン支社のトップは女性であるという。その他、マーケティングなどの主要ポジションにも女性が高いポジションを占めているようだ。
AirAsiaのタグラインは「Now Everyone Can Fly.」しかし東南アジア社会に移動手段を提供しているだけではなく、アジア発の成長企業のひとつとして、今後も多方面でのソーシャルインパクトが注目される企業であることは間違いない。とはいっても航空業界の競争は厳しい。アジアにはインカンバントキャリアに加え多数のローコストキャリアが存在する。今後どのような戦略で事業拡大を押し進めるかは要注目。

毎回記事レビューとコメントを書きながら、最もベーシックな市場調査であるマーケットインテリジェンスも疑問の宝庫で本当に面白いと思う。


【関連ウェブサイト】
AirAsia: ルートマップ

AirAsia: What is low cost? 


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