2012年9月25日火曜日

【記事リビュー】イノベーション:アップルを模倣することに価値があるのか?(McKinsey Quarterly - The perils of best practices: should you emulate Apple? の抄訳)

The perils of best practices: should you emulate Apple? 
(McKinsey Quarterly September 2012)

【記事の紹介
タイトル:The perils of best practices: should you emulate Apple? 
出典:McKinsey Quarterly September 2012
原文:英語
リンク:

【記事の抄訳
(あくまでも内容を簡単にまとめたものである点、ご了承ください。一語一句正確に知りたい方は、是非原文にチャレンジしてください!)


成功企業を他社が見習うのは当然だ。すでに試され成功しているアプローチを取る方が、新たなものを一から築き上げるよりも好ましいと考えるのは理にかなっている。80年代、90年代にかけて、米/欧州系企業が看板方式やジャストインタイム生産など日系企業が実施していた生産工程の効率化を取り入れてきたし、マネジメントコンサルタントも成功モデルを積極的に紹介してきた。

しかし他社を大きく引き離し、例外的な成功を遂げた企業というのは、本当に模範となりうるのだろうか?

現在最も注目されているのは紛れもなくアップルだ。「アップル」「イノベーション」で検索すると、過去3年だけでも1500を超える記事が発行されている。スティーブ・ジョブスの伝記も40週連続でニューヨークタイムズのベストセラーリスト入りしている。彼の死後、アップルの「Can-do」カルチャー、斬新なプロダクトデザイン、グローバルサプライチェーンマネジメント、創立者たちに関してなど、多方面から取り上げた書籍が40冊ほど出版されている。リーダーシップ、人材確保・育成、企業戦略、テクノロジーの組み合わせにより、アップルは類を見ない成功企業として成長を遂げてきた。

アップル・モデルはイノベーションを追求する他社の模範と成りうるかをマッキンゼーの「The Granularity of Growth」では分析しているが、成長の3要素として、以下の3点を挙げられる。
①競争優位性のある市場で事業を行い、市場の成長・拡大の流れに乗る形で自社製品やサービスを拡大し売上を増加させる
②M&Aにより成長を取り込む
③事業効率化によるオーガニックグロースを追求する

マッキンゼーの750社を超える企業データベースによると、1999年以降、市場シェア増加(※買収によるシェア拡大を除く)を達成した企業は微々たるものだった。

それとは対照的に、アップルは継続的に確実に市場シェアを拡大してきた。
それだけではない。1999年から2008年の10年間の間、グローバル大手企業(注:スタートアップ、大手への対抗サービスに特化する中小企業は除く、いわゆるインカンバント企業)のうち、本当の意味で新たな市場を形成・確立したのもアップル1社だ。その新たな市場は7.9%の売上成長率の45%を占め、トップ10入りした他社の新事業が売上成長率に占める割合(21%)と比較すると突出していることが分かる。ICT産業におけるトップパフォーマーのLenovoおよびCiscoと比較しても、アップルの新市場形成による成長は6倍も高い。その他の産業では、そもそも新市場形成自体による成長はほぼゼロに近いか、場合によってはマイナス成長となっている。

アップルは他社をしのぐ実績から注目されるべき企業だ。創立者やエグゼクティブのリーダーシップはもとより、斬新な商品、サービス、ビジネスモデル、企業文化に加え、サプライチェーンマネジメント分野などにおいても新たなプロセスやケイパビリティを築いてきてた。デザイン、ブランドロイヤルティ、リテール事業展開においてアップルから学ぶことができる企業は多い。

アップルを模倣すべきではない、と言おうとしているのではない。ただ、何を学ぶのか、そしてどのような結果を求めるのかを明確にすべきだ。

向こう見ずにアップルのディスラプティブ・イノベーションを模倣するのではなく、「スケール・イノベーション(innovation at scale)」戦略を取ることもできる。コア事業において新商品、新サービスを投入し徹底的に効率化しオーガニックグロースを繰り返すことで成長性を保つことはリピータビリティ、持続性の面において優れている。とはいっても簡単に達成できるものではなく、グローバル大手(インカンバント)企業のたった6%が、1999年から2007年の間ほぼ確実にスケール・イノベーションを達成している。しかし技術や組織力、成功しているビジネスモデルなどの既存資産を活かすことが、アップルが行ってきたような新規市場形成よりも多くの大企業にとっては達成可能と言える。

(注:グラフは割愛していますので原文にアクセスしご確認ください。)

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【追加参考記事/書籍】
McKinsey : Granularity of Growth
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