2012年11月5日月曜日

Write There Write Now (2012/11/5):いい仕事に出会うために考えること


海外生活11年目、6カ国目在住中(日本フランスオランダアメリカイギリス現在はシンガポール)のA+S代表が、幅広い分野からランダムに情報提供しています。

Write There Write Nowは、通常、編集後記である文章が本文となっているニューズレター。「それが面白い、だから適当に毎回目を通しているのさ」、と言ってもらえるようになるのが密かな目標です。もう少しまじめな話は、別途発行しています。合わせてご活用ください。



【今回のテーマ:いい仕事に出会うために考えること】

しばらく前にダウンロードしていたKnowledge@Whartonの記事『Why Good People Can't Get Jobs: Chasing after the 'Purple Squirrel'』(出典は参考リンク参照)という記事をコーヒーを飲みながら読んでいた。(余談だが、コーヒー好きの私には、朝のこの時間が至福の時。)

ペンシルバニア大学のビジネススクール、ワートン・スクールのPeter Cappelli教授が書いた『Why Good People Can't Get Jobs: The Skills Gap and What Companies Can Do About It』という本に関する記事だ。実際読んでいない本について語るのはいかがなものか、とは思いつつ、記事で紹介されている内容としては、以下のような内容である模様。

『多くの会社が「人を採用できない、スキルを持った人材がいない」と言っている。しかし、そもそも採用プロセスは会社側が握っており、空いたポジションと同じことを他の会社でやっていた人を見つけようとすること自体に無理がある。経験者ばかりを求める傾向があるが、経験は仕事をしないでは得ることができない。また多くの場合はスキルギャップではなくトレーニングギャップも大きな問題。』

比較的ジュニアの採用についての部分がもしかするとこのインタビューではピックアップされているかな、という印象を多少受けたので、全体のメッセージではないかもしれない。そこは本を読んで穴埋めするとしても、しかしこの記事に書かれていたことには全般的にはうなずけると思った。

例えば、大手企業である場合はよく社内公募も同時に行うことが多いので、ジョブスペックもすでにその分野のエキスパートである上、社内プロセスらしきことの熟知していることが条件として挙げられている場合も結構ある。それじゃあ外部の人間には難しいだろう。

とはいっても受ける側の準備という点で、私も採用する側として個人的に気になっていた点が2つある。(比較的若手の人が多いが、そうでもない人でも時々見られること。)

①意外にも面接しているポジションのジョブスペックを理解していない人が結構多い。
基本はジョブスペックを見るとだいたいのポジションイメージが出来るが、そうでもない人も多く面接に来る。スキルや経験面、あるいは今後取り組みたい関心分野と合致する場合、ジョブスペックを見ると『あ、6割が経験で対応可、4割は新たなチャレンジ』など、すでにやってきたことでカバーできる部分がだいたいどれぐらいか、というのは分かるはずだ。しかし驚くことに、ポジションタイトルだけで勝手に職務内容を決めつけている人も少なからずいる。

②これまた意外にも自分がやってきたことが、一般的にはどういう職務内容であるか言えない人がいる。
(私は基本マーケティング分野で働いてきたので必ずしも他部署でも同様のことが言えるかは分からないものの)人の履歴書を読んでいると、ポジションタイトルと職務内容の擦り合わせが案外といい加減な会社も多いんだなあ、感じる。
履歴書のポジションには違うタイトル(例えば『マーケットリサーチャー』)が書かれていても、職務内容的には『これって、プロダクトマネジャーということですよね?』というと、『あ、はい、そうです』と驚きつつも同意する人もいる。
実はこれも結構問題だと思う。自分がしてきたことが一般的には(自社以外では)なんと言うポジションであるかを知らない、あるいはうまく補足することで分かりやすく表現するなどの配慮がない、というのは、受け手からはプロ意識の欠如と取られてしまう。
もちろんタイトルの詐称やインフレーションというのは良くないが、逆に、タイトル的には何だかよく分からなくても、例えば『一般的に経営企画と呼ばれるポジションに近しい職務内容でした』と言うだけで、採用側はピンとくる。同様に、ひとつのポジションでも複数の機能をこなしている場合なども、このように○○が何割、△△が何割、と言うだけで分かりやすい。

少なくとも上記2つが理解できていなければ、どこまでを経験でカバーできて、どこからが『ポテンシャルの売り込み』となるかが最初の面接の場で双方にとって明確にならない。そこが明確にならなければ、企業側も『やめとくかな~』となる。不景気など、買い手市場である場合は確かに採用される側には厳しい状況であるのは間違いない。特に職場経験が浅い人たちの場合は『ポテンシャルの売り込み』の部分が大きいので、業界知識や必要なスキルをまずはどこまで『理解』しているか、という部分が重要。一見すると関連性のないことを、どうやって関連付けるか、意味付けを与えるか。『経験はないけど基礎力、理解力はあります』、そこをアピールすることになる。

加えて最近若手の人にアドバイスするのは、まずは『教育意欲が高い会社に入社する』こと。あと、『きちんとしているな』と感じる会社に入ること。正直、何の新しさも個性もないアドバイスだ(汗)。でもとても重要だと思う。OJTOJTと言う会社ではなく(運悪く見本になる人が少なかったら困る)、ちゃんとトレーニングバジェットがあるとか、プログラムがある企業がいい。規律正しい、クリーンな環境をまずは知ることは、もし起業したいと思うような人にもプラスになると思う。

特に海外で会社員をして行く人にはそこにこだわることが重要だと実は考えている。日本のように総合職が多い場合は、同じ時期に入社して、同期と呼ばれる人たちがいて、みんなで(最初は)仲良くスタートできる。上、下だけではなく横のつながりがあるというのは心強いし、重要な社内ネットワークでもある。ただ、海外市場では、基本ライファー(ひとつの企業でずっと働く人)を育てるという意識はない。だから自分自身で選んだ分野で戦って行くことになる。部署異動というのも確かに大手企業ではあるが、キャリアアップにどんどん転職していく場合、売りは自分のスキル。最近は私も自分のマインドセットを変えるため、自分自身を(会社勤めしたとしても)特定のスキルや経験を売るフリー・エージェントと考えるようにしている。その方が自分を『○○社の社員』と考えるより実は現実に近いからだ。

そして最初はスキルと経験を売って行くわけだが、30過ぎてマネジャーポジションになると、『しかも信用できる』という印象を与える必要がある。プロとしての意識、『しつけ』のようなものを早い段階で得ることが、将来的にどんどんフリー・エージェント化していく自分のキャリアの土台となる。その後は、それぞれが与えられた機会にかぶりついて、得られるものをすべて吸収していこう、と土臭く思えるか。もう知っている、やったことがある、と思う分野でも、そこに『価値』『意味』を見つけられるかが多分吸収率につながるのだろうと感じている。

もちろん、上記のことは海外市場で限ったことではないが、海外で、しかも日系ではなくローカル企業(日本で言う外資)で働こうとするのであれば、かなりの独立心が前提とされることは間違いない。

なんだか話がずれて、『Why Good People Can't Get Jobs』ではなくて、『Why People Can't Get Good Jobs』になってきたが、『自己ブランディング』などのテクニックに関する情報や記事が多い中で、『自分の立ち位置を理解する』『スキルだけではなく人間力を磨く』ということもいい仕事に出会って行くには合わせて重要だな、と最近強く感じている次第。



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【関連記事】
Why Good People Can't Get Jobs: Chasing after the 'Purple Squirrel'
(June 20, 2012; Knowledge@Wharton)

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