【今回のテーマ:At Will契約について考える】
国によって異なるが、海外市場で働く際に心構えとして持っておくといいのが、就職は『at will』契約であるということ。
日本では、まだまだ転職のリスクが高いと考える人も多い上、最初から転職を念頭においている人は少ないようだ。ビジネス系雑誌でも例えば『ローカルスタッフはすぐ転職する』とため息をつく日本人駐在員、というような記載があったりするが、それも日本での会社への忠誠心という考え方から来ているのだと思う。
決してそれが悪いとは言うつもりはない(その点は以前も記事に書いた)が、一般的に海外市場では事情が異なる。基本はお互い満足している間だけ雇用関係が成立する、という『at will』契約が中心だ。(※『at will』契約については検索すればたくさんコメントがあるので、ここでは省略させていただく。)
そう聞くと、雇用される側に不利なように聞こえるかもしれない。確かに雇われる側が守られているかどうかとどちらとも言えない。(とはいっても一般的に育てた社員を解雇して新しい社員を育て直すことはロスが大きいので、企業が解雇を振りかざして社員を脅す、というようなことは無い。そういうことはパワハラなどで違法となる国がほとんどだ。)
ただ、だから、自分のスキルはいかほどかを常に意識することが重要になる。一生同じ会社で働くことが前提ではないので、いつかは自分で次を探して行くことになるからだ。
そうである場合の心構えとして考えておきたいことは、例えば以下のようなことだ。
1)自分は汎用性があるスキルを身につけているか?
各企業に独特の仕事のやり方があるのは当然だ。ただ、例えば自分がしていることは他社にも存在する職務内容か、やっていることの中で何が汎用性が高いことか、などをしっかり見極めることが重要だ。仕事のアサインメントにおいても、引き受ける際のタスクの価値判断のひとつとして、この点を押さえておきたい。
2)ポジションタイトルは、外部から見て分かりやすい内容か?実際の職務と一致しているか?
転職することを前提でいると、他社や人材コンサルタントなどから見ても分かりやすいポジションタイトルの方がヘッドハンティングの可能性が高い。もっと言えば、マネジャーポジション以降は一定の経験があると見なされるため、仕事の声がかかり始める。だからポジションタイトルは重要だ。一人でも自分の下で働くスタッフがいれば、マネジャーやリーダーなどというポジションをリクエストすべきだ。また、社内だけで通用するような、日本に多い『営業一課』のようなタイトルは最悪だ。一課の意味するところが外部には分からない。あるいは、社内でのみ通用するポジション名は分かりにくい。自分のタイトルがそのような不明瞭なものではないか、そして実際やっている職務内容と一致しているかは契約書をサインする際、また職務内容が変わる時に人事担当と擦り合わせをする必要がある。
3)自分はファンクショナルスペシャリストなのか、あるいはジェネラルマネジャーを目指すのか。
日本では係長、課長、部長、本部長、などというように、ジェネラルマネジメントのポジションが中心だが、海外では専門分野で活躍を目指し、マネジメントとは別のルートであるファンクショナルスペシャリストという考え方がある。とはいっても上に行けば部下もいるし、人や組織の管理はあるので、マネジメントを放棄しているというわけではない。ただ、専門性を売りにするのであれば、その分野に直結する知識や経験が重視される。だからブレないキャリアの方が好まれる。あるいは価値の高いブレであることを意識する必要がある。同様に、ジェネラルマネジャーを目指すのであれば人やタスクの取りまとめをする役割に積極的に手を上げるとか、早いところマネジャーというタイトルを獲得することが重要だ。
『at will』契約は必ずしも不利ではない。契約が自分に見合わないと感じた時に、契約の交渉が出来るからだ。会社が必要な人材と見なせば、多少なりとも条件の改善が期待できる。ただ、すべてを年俸としての金銭的な見返りではなく、例えばもっとトレーニングを受ける機会を与えてもらう、産業コンフェレンスに参加させてもらい人脈を築くなど、総括的に人材としての価値が高まるものを交渉するのも手だ。
一方でドライな関係であると言えばそうでもある。周りには『私はこれだけしかしないよ』という態度の人も多い。そのような中で、自分自身はどう考えるのか。周りと同じように『これだけしかしません派』になるのか、会社の目標に照らし合わせながらも自分自身でも目標を持ち、自己実現を目指すか。『流されない』生き方は職場でも大事だ。
私はこれを選択する。
『ぶれない生き方』などという表現があるが、一歩一歩、『I choose to ….』という表現で考えていくと分かりやすいかもしれない。私もやっと最近になり大人としての知恵が付き、迷いが生じると『自分は何を選ぶのか?』と意識するようにしはじめた。結局はそういうことなんじゃないかな。
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